怪盗バタフライ仮面の命を狙う怪盗ヒゲ男爵。
ヒゲ男爵にとってバタフライ仮面は、いつも獲物を横取りされている厄介な相手でした。
ある日の夜、バタフライ仮面が悪徳宝石商の館に
盗まれた宝石を奪いに来る事を知ったヒゲ男爵は、
先回りして忍び込み、天井のシャンデリアに細工をします。
そして、何も知らないバタフライ仮面は、
シャンデリアの真下にある宝石の入ったショーケースの元へとやって来ます。

今だっ!
ヒゲ男爵は仕掛けのスイッチを押しますが、何も起こりません。

な、なぜ落ちない?
バタフライ仮面は何事もなく宝石を手に入れると、物陰に人の気配を感じ取ります。

ヒゲ男爵ね?
隠れてないで出て来なさいよ。
姿を現したヒゲ男爵は、バタフライ仮面に歩み寄り、シャンデリアの下で向き合います。

私より先に来ていながら宝石を奪わないなんて変ね。

ショーケースの解錠が出来なかったのさ。

いつもなら叩き壊すくせに。
あなたらしくないじゃない。

俺も少しは大人になったんだ。

(いつもと様子が違う……。
なんかクサイわね)
すると、時間を置いて仕掛けが作動し、シャンデリアが落ちて来ます。

しまった!
今頃になって……。
バタフライ仮面に気を取られていたヒゲ男爵は
逃げ遅れてシャンデリアの下敷きになってしまいます。

ぐわあああっ!
バタフライ仮面は間一髪身をかわしたものの、
飛び散ったガラスの破片が仮面の留め紐をかすめます。

私を始末しようと思ってたみたいだけど、
墓穴を掘ってしまったようね。

うぐぐぐぐ……。

あなたにはそんな最後がお似合いだわ。

さ、最後にお前の素顔が見てみたい。

何を言っているの。
仮面を着けた怪盗の素顔は最後まで秘密よ。
しかし、この時までかろうじて繋がっていた仮面の留め紐がとうとう切れてしまいます。
ハラリと剥がれ落ちる仮面……。
バタフライ仮面の素顔が露わになります。

キャッ!
とっさに両手で顔を覆うバタフライ仮面。

お、お前はっ!
かつて俺を刑務所にブチ込んだ女性警察官。
正義を守る身でありながら裏では怪盗をやっていたとは!
バタフライ仮面の正体を知ったものの息を引き取るヒゲ男爵。
そして、誰にも見られた事の無い仮面の下の素顔を見られた屈辱で、
その場にガックリと膝をつくバタフライ仮面。

マスクを剥がされるなんてショック……。
早くマスクを着けて顔を隠さないと……。
イラスト by りるくてぃ様
イラスト by ねもこ様